介護関係者です。後見人にどう接すればよいのでしょうか?
最近よくあるシチュエーション
「後見人への対応に苦慮している」という介護関係者からの相談が増えています。例えば、「後見人と連絡が取れない」、「後見人が費用を払わない」、「後見人が介護の会議に参加しない」、「後見人から介護のことは任せると言われた」、「後見人が契約を解除し本人をどこかへ連れて行ってしまった」等です。「とても本人の代理人と思えない。本人のためになっていないと思う」とか「後見人はその程度の人とあきらめている」という声も寄せられます。
このような実情を踏まえ、介護の立場で後見人とどのように接すればよいのか、解説します。
「本人一番・後見人二番」を肝に銘じる
本人が一番、後見人は二番という基本ルールを肝に銘じてください。後見人は、本人の代理代行人に過ぎません。本人の意向を後見人に優先して仕事をしてください。
例えば、「本人が施設に残りたい」といえばそれがすべてです。本人が施設に残れるよう代理・代行するのが後見人の務めとなります。このような場合に退所手続きをとるような後見人がいれば、それは「権利の乱用」です。よって、施設として後見人に応じる必要はありませんし、応じてはいけません。後見人からご本人を守りましょう。
後見業界には「本人の最善の利益(Bestインタレスト)を追求する」という考え方があります。介護関係者として、後見人の言動が本人のBestインタレストを追求しているかどうか、常に評価してください。
1.「後見人と連絡が取れない」
後見人がついても連絡が取れないようでは仕事になりません。後見人と連絡が取れない状態が続くようなら家庭裁判所に電話してください。家庭裁判所から後見人に連絡が行って、後見人からすぐに連絡がくるでしょう。「後見人とは連絡がつかないもの」とあきらめているという介護関係者も多いようですが、そのように放置しておくと、いざというときに介護事業者側が不利になってしまうこともありますので、何かあれば、家庭裁判所に連絡することをお勧めします。
2.「後見人が費用を払わない」
払いが悪い・払いが遅い後見人は少なくありません。固定費用は引き落としにするだけで、お小遣い等を払わない後見人もいます。このような後見人がいれば、家庭裁判所に電話してください。家庭裁判所から後見人に連絡が行って、後見人がすぐにお金を持参するか振り込んでくるでしょう。
3.「後見人が介護の会議に参加しない」
後見人は、被後見人に関する介護の会議に参加することになっています。介護の会議に参加しないことは後見人としてのサボりです。よって、ケアカンファレンス等に参加しない後見人がいれば、家庭裁判所にご連絡ください。次の会議から参加するようになるでしょう。
会議に出ても「何の意見もない」「関係ないことを言う」後見人も少なくないようです。そのような場合は能力不足で、その人の後見人としては不適格と思われますので、家庭裁判所に「後見人を替えた方が良い。入居者やご利用者様のためにならない。」と電話で伝えてください。それにより、後見人が変更されることもあります。
4.後見人から「介護のことは任せる」と言われた
後見人から「介護のことは任せる」と言われたら大問題です。後見人と介護事業所は相対する関係にありますので、任せることなど絶対にできないからです。そのような要請には応じないで、すぐに家庭裁判所に通報してください。家庭裁判所から後見人にお灸が据えられるでしょう。後見人に任されて仕事をしていた介護事業所は、利益の相反がないか業務の確認を行ってください。「後見人から任せると言われていたので・・・」といっても後の祭り、問題があった時は「鵜呑みにしたあなたが悪い」ということで責任は事業者が取ることになりますのでご注意ください。
5.後見人は家族の面談を拒むことはできません
後見人に「面談の代理権、同意権、取消権」はありません。したがって、家族や友人との面談に口をはさむような後見人がいたら、越権行為者として、家庭裁判所にすぐに通報してください。家族内のトラブルがあっても、介護事業所は、後見人からの影響を受けたり、後見人を利用して対応することはできません。事業所の判断として家族内のトラブルに対応するしかないのです。
まとめ
「後見人への対応に苦慮している」という介護関係者からの相談が増えています。本人が一番、後見人は二番という基本ルールを肝に銘じ、本人の意向を後見人に優先して仕事をしてください。後見人の言動がおかしいなと思ったら、介護事業所内で判断せず、家庭裁判所に連絡してください。
最近のお悩みの傾向について
解説:一般社団法人「後見の杜」宮内康二代表
家族に弁護士等の後見人がついている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家族の反対を押し切って自治体が強引に後見人を付ける手続きをした
- 家裁やリーガルサポートに後見人の文句をいっても取り扱わない
- 後見制度そのものから離れる方法はないのか
ご自分が家族の後見人をされている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家庭裁判所から後見制度支援信託か監督人を選べといわれ当惑している
- 監督人から不当に文句を言われ、高額な報酬を請求されて困る
- 財産管理をする後見人がつき被後見人の通帳を出せとせがんでくる
後見人をつけるかご検討中の方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 後見人って大丈夫なの?
- 後見制度以外の方法はないの?
- 家族が後見人になるにはどうしたらいいの?
私たちは、後見される側やそのご家族の立場にたって、
一つ一つの後見事例の適切な運用をサポートします。
複雑な後見制度を紐解き、その運用を改善・向上していきましょう。