後見人はどのように決まるのですか?
最近よくあるシチュエーション
「どうして私が後見人になれなかったの?」とか「どうしてあの人が家族の後見人になったの?」という質問が増えています。
「弁護士や自治体に“あなたが後見人になれる”と言われたので、後見人をつける申し立てをした。しかし、私は後見人になれず、騙されたとしか思えません!」と憤慨する人も少なくありません。
本記事では、後見人や監督人がどのようにして決まるのか、わかりやすく説明します。
1. 自分で決める任意後見
誰を後見人にするか、それを自分で決めるのが「任意後見」という仕組みです。
心あたりの家族・友人・法人などに任意後見人になってくれるか打診して、OKが出れば、その人が将来の任意後見人になります。お金のことはAさんに、介護のことはBさんにというように、相手によって内容を分けて頼むことも可能です。
子供が未成年の場合、親が、心あたりの人や法人に、子供の任意後見を頼むことも可能です。お子さんに障害がある親御さんには人気の方法です。
任意後見は、頼む人と頼まれる人の間で結ぶ契約後見です。よって、契約を結んだ後でも、事情に応じて、どちらからでも任意後見契約を解除することができます。
2. 家裁が措置する法定後見
誰を後見人にするか、それを家庭裁判所が決めるのが「法定後見」という仕組みです。
ほとんどの場合、本人も家族も会ったことのない人が後見人になります。その後見人は弁護士、司法書士、社会福祉士などです。
それぞれの団体で後見人になる研修を受け、それぞれの団体が家庭裁判所に提出する「後見人等候補者名簿」に名前を載せてもらい、家庭裁判所からの受注を待つ仕組みです。
家庭裁判所からの発注の際、どのような案件であるかについてあらかじめ情報が提供され、「引き受けます」ということでその人が後見人になります。引き受けたくない場合は断ることもできますが、あまり断っていると家庭裁判所から仕事が回ってこなくなることもあるようです。
3. 預貯金が500万円以上あると家族は後見人になれない
後見を必要とする人の預貯金が500万円以上あると、その人の家族は法定後見人に選ばれない実例が増えています。
法定後見人(成年後見人・保佐人・補助人)を付ける申し立て書類の中に「後見人等候補者の欄」がありますが、そこに家族の名前を書いても、本人の預貯金が500万円以上あると、その家族が選任されないということです。
この運用は、法律ではなく、ここ数年見られる家庭裁判所内の独自ルールです。
このような、家族を後見人に選任しない運用に対する批判が急増していますので、今後、見直しがあるかもしれません。現状においてもこの運用への対策もなくはないので、ご興味ある方は相談フォームからご相談ください。
4. 監督人はどのように決まるの?
任意後見をスタートさせるには必ず監督人がつきます。任意後見をスタートさせるということは、頼んだ人の判断能力が相当に低下してしまったからであり、頼んだ人が任意後見人の仕事ぶりをチェックできません。よって、家庭裁判所が選んだ監督人が委任者に代わって任意後見人の業務をチェックするのです。
これに対し、法定後見の場合、家庭裁判所が必要と判断すれば監督人が付けられます。
法定後見人の人選は家裁がしているので、まあ、監督人がいなくてもだ丈夫だろうという考えがあるからです。そして、監督人が不必要になればその監督人は外れます。
いずれにせよ、監督人は家庭裁判所が選任します。
たいていの場合、監督人は、業界団体から家庭裁判所に提出された「監督人候補者名簿」に載っている弁護士や司法書士です。なお、後見人と監督人が身内であったり、利害関係者であることを避けるルールや運用があります。
まとめ
任意後見の場合、心あたりの家族・友人・法人などに任意後見人になってくれるか打診してOKが出れば、その人が将来の任意後見人になります。
法定後見の場合、家庭裁判所が後見人を決めます。ほとんどの場合、本人も家族も会ったことのない弁護士、司法書士、社会福祉士などが選任されます。
後見を必要とする人の預貯金が500万円以上ある場合、その家族が後見人になれない運用がここ数年続いていますのでご注意ください。
最近のお悩みの傾向について
解説:一般社団法人「後見の杜」宮内康二代表
家族に弁護士等の後見人がついている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家族の反対を押し切って自治体が強引に後見人を付ける手続きをした
- 家裁やリーガルサポートに後見人の文句をいっても取り扱わない
- 後見制度そのものから離れる方法はないのか
ご自分が家族の後見人をされている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家庭裁判所から後見制度支援信託か監督人を選べといわれ当惑している
- 監督人から不当に文句を言われ、高額な報酬を請求されて困る
- 財産管理をする後見人がつき被後見人の通帳を出せとせがんでくる
後見人をつけるかご検討中の方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 後見人って大丈夫なの?
- 後見制度以外の方法はないの?
- 家族が後見人になるにはどうしたらいいの?
私たちは、後見される側やそのご家族の立場にたって、
一つ一つの後見事例の適切な運用をサポートします。
複雑な後見制度を紐解き、その運用を改善・向上していきましょう。