後見を止めたいです。方法はありますか?
最近よくあるシチュエーション
「後見をやめたい」「後見のない状態に戻りたい」と仰る方が増えています。そのような場合、後見を無しにするよう家裁に求める方法があります。手続き上の用語は「後見開始の審判の取消の申立て」です。この申し立てのポイントは「後見人がいなくても本人は大丈夫」ということを家裁に伝えることです。取り消しになれば、その日から後見フリーの状態になります!なお、保佐なら「保佐開始の審判の取消の申立て」、補助なら「補助開始の審判の取消の申立て」となります。
手続きの流れとポイント
後見の取り消しを求めることができるのは被後見人、被後見人の親族、後見人、監督人等です。担当家裁に「後見開始の審判の取消の申立て」をすることで手続きがスタートします。(提出書類のフォーマットは家裁にお尋ねください)
必要な書類は医者の診断書で、必要な情報は財産管理面で本人が自立してきたことを示す生活上の実例です。取り消しの申立てを受けた家裁は、被後見人をヒアリングしたり、医者に鑑定してもらったり、後見人の意見を聴くなどの調査を経て、数カ月後に、後見を無しにするか継続するか決定します。
1.医者による診断と鑑定
心当たりの医者に、本人の現在の能力を診断してもらいます。具体的には、診断書(成年後見用)に、今まで後見で来ている場合は「保佐」か「補助」、保佐で来ている場合は「補助」か「非該当」、補助で来ている場合は「非該当」にチェックマークを入れてもらい、家裁に提出します。
診断では、医者から、本人の生活ぶりを聞かれます。その際、「歩けるようになった」、「食べれるようになった」と説明しても意味がありません。お金のこと、不動産のこと、介護契約のこと等が、自分でできる、あるいは、それらに関する意思表示ができるようになったという財産管理面で自立できるようになった事実をしっかりと説明して下さい。
被後見人の調子もあるでしょうから、一人の医者の診断結果が思わしくなくても、他の医者にも診てもらうと良いでしょう。家裁には、調子のよい時の診断書を出してください。鑑定の場合も要領は同じです。要は、後見無くても大丈夫ということを鑑定医に具体的に説明するのです。
2.後見が無くても大丈夫な体制を整える
認知症があっても、お金のこと、介護のこと、その他について意思表示をすることができれば、後見無しで生きていくことは可能です。知的・精神障害があっても、仕事のこと、住まいのこと、移動のことなどについて意思表示ができれば、後見制度から外れても大丈夫でしょう。悪質商法など、本人に不都合なことがあれば錯誤無効などの裁判を使えばよいのですから。
ただ、後見が外れて本人に不利益が生じるようでは元も子もありませんから、後見の取り消しに先立ち、後見に代わるサポート体制を敷いておくことは重要でしょう。後見の取り消し後の計画がしっかりと備わっていることは、本人の今後にとって必要であるのと同時に、本人が後見から外れるためにも重要なポイントとなります。
家裁の調査官によるヒアリングに際しては、本人にとって重要な取引にどのようなものがあり、それを本人がどのように決定し、どのように遂行するかについて、しっかりと説明できるようにしておきましょう。
3.よくある間違い
(1)「今の後見人が良くないから後見を取り消したい」という理屈は後見取消の申立てには馴染みません。その場合は「後見人の解任請求や監督処分の申し立て」をして下さい。
(2)医者の診断や鑑定で「保佐」が出たからと言って、後見から保佐に切り替わることはありません。後見は無くなり、保佐が欲しければ新たに保佐開始の審判の申立てが必要です。
(3)被後見人でも公証人が良しとすれば任意後見契約の締結は可能です。そのようにして締結した任意後見契約に関する任意後見監督人の選任の申し立てを行い、それが家裁で認められれば、それまでの法定後見は取り消されます。
まとめ
本人の医学的ないし財産管理の状況が改善されれば、後見から卒業することも視野に入ってきます。これを「後見開始の審判の取消の申立て」と言います。ただ、今の後見人が良くないからということで後見取り消しを求めることはできません。後見が外れて本人に不利益が生じるようでは元も子もありませんから、後見の取り消しに先立ち、後見に代わるサポート体制を敷いておくことは重要でしょう。
最近のお悩みの傾向について
解説:一般社団法人「後見の杜」宮内康二代表
家族に弁護士等の後見人がついている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家族の反対を押し切って自治体が強引に後見人を付ける手続きをした
- 家裁やリーガルサポートに後見人の文句をいっても取り扱わない
- 後見制度そのものから離れる方法はないのか
ご自分が家族の後見人をされている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家庭裁判所から後見制度支援信託か監督人を選べといわれ当惑している
- 監督人から不当に文句を言われ、高額な報酬を請求されて困る
- 財産管理をする後見人がつき被後見人の通帳を出せとせがんでくる
後見人をつけるかご検討中の方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 後見人って大丈夫なの?
- 後見制度以外の方法はないの?
- 家族が後見人になるにはどうしたらいいの?
私たちは、後見される側やそのご家族の立場にたって、
一つ一つの後見事例の適切な運用をサポートします。
複雑な後見制度を紐解き、その運用を改善・向上していきましょう。