2017.12.11

後見人と上手くいかないときの対応策は?

5つの対応策から4つの手続きについて解説

「後見人とうまくいかない」というご相談は数多くあります。このような状態になると後見人と話し合っても埒があかないでしょう。そのようなときのために「懲戒請求」「解任請求」「監督処分」「後見人の追加」「許可審判」という5つの手続きが用意されています。本記事ではそれらの中から「解任請求」「監督処分」「後見人の追加」「許可審判」の4つにフォーカスを当てご紹介します。

※「懲戒請求」に関する解説はこちらをご覧ください

1.解任請求

解任請求とは、「いまの後見人を解任して他の人を充てて欲しい」という主旨の請求です。家裁に申し立てることで手続きが始まります。

解任請求という言葉の強さに惹かれ「解任請求したい」と考える方は少なくありません。また、解任請求を勧める家裁職員も少なくありません。しかし、多くの場合において、後見人は具体的な横領や暴行がない限り、解任されることはありません。

よって、「後見人が本人に会いに来ない」、「後見人が不動産を売ろうとする」、「後見人が保険を解約してしまった」、「後見人が暴言を吐いた」、「後見人が面会を制限する」、「後見人が居留守を使って連絡が取れない」といった理由を挙げても解任されることはほぼないため、そのような解任請求は適切な手続きとは言えません。

また、解任請求が棄却され、解任しないという結果が出た場合、後見人はこれを逆手に「家裁は問題視しなかったでしょ」と横柄な態度に出てくるようなケースもあるようです。「解任したいほどに怒っている」という気持ちは理解できますが、横領や暴行があればその証拠をつけて解任請求するものとし、それ以外の場合は懲戒請求や監督処分を実行することが有効と思われます。

2.監督処分

監督処分とは、家裁に対し、後見人への注意・指導を求める手続きです。家裁に申し立てることで手続きが始まります。

後見人がいつ、どのような場面で、何を言ったか(言わなかったか)、何をしたか(しなかったか)について、わかりやすい文章で説明してください。関連する写真やメール等があればそれも添付します。家裁から後見人に対し、何をいつまでにして欲しいかを書くと家裁も対応しやすいと思われます。提出する書面のタイトルは「監督処分の申し立て」としてください。当然、差出人(申立人)の名前や住所を記載します。多くの不満があっても、特にひどいと思われるものに焦点を絞り、2~3枚に収めて提出すると良いでしょう。監督処分の申し立てを受けた家裁は、後見人を調査します。問題があれば指導し、問題がなければ問題なしにつき終了です。調査結果は必ずしも申立人にフィードバックされませんので、1週間おきくらいに家裁に電話で進捗を確認すると良いでしょう。なお、調査の過程で家裁から後見人に「辞任勧告」が出ることもあります。すると、それまでの後見人は退き、次の後見人が選任されます。

3.後見人の追加

後見人の追加は、後見人として他の人を追加して欲しい場合に行う手続きです。家裁に申し立てることで手続きが始まります。

「私が後見人になった方がまし」「あの人に後見人をやって欲しい」と仰る方は少なくありません。そのような場合に使うのが「後見人の追加の申し立て」です。この申し立てにあたり「今の後見人がいかにひどいか」を縷々主張したり記載する方がいますが、それは的外れです。文句を言う場合は「監督処分」「懲戒請求」「解任請求」などが適していますのでそちらをご利用ください。

もとい、「後見人の追加」をする場合は、具体的でポジティブなトーンが好ましいです。「私が後見人になったら、本人の気持ちはこのように汲む。財産管理はこのように行い、医療や介護の手配はこのようにする。」というように具体的かつ前向きに書いたり答えたりすることが重要です。いわゆる「後見プラン」となるものを用意して、被後見人が亡くなるまでの収支や代理権や同意権の行使について、予測を立てるのも効果的です。結果として後見人に追加されたり、されなかったりもしますが、申請を試みる価値は十分にあるでしょう。

4.許可審判

許可審判とは、「後見人はダメだと言っているが、家裁から直接許可をもらいたい」という主旨の請求です。こちらも家裁に申し立てることで手続きが始まります。

「本人の財産を減らさないのが後見人の仕事です」などと言って、お節もダメ、お菓子もダメ、旅行もダメ、冠婚葬祭費用も認めない後見人がいます。このような場合、家裁に直談判する仕組みがあり、これを「許可審判の申立て」と言います。

後見人がダメと言っている事柄を明記し、「家裁としてはどうなんですか?いいですよね?後見人に代わってGoを出してください」と家裁の態度を問う手続きです。許可審判の申立てがあると、家裁は後見人に事情を聞き、多くの場合、後見人がOKを出してきますので効果があると言えます。ただし、不当な要請はもちろん却下されますのでご注意ください。

許可を求める場合は、被後見人もそれを望んでいる、それをすることは当然自然のことで損はない、などの内容を付記すると手続きはスムーズに進むと思います。

まとめ

後見人と上手くいかない場合は、その後見人を選任した家裁に改善を求めましょう。具体的には「解任請求」「監督処分」「後見人の追加」「許可審判」という手続きが用意されています。

解任請求は具体的な横領や暴行がある場合に限って活用し、それ以外の場合は、「監督処分」「後見人の追加」「許可審判」の方法を取ると実行性が期待できるでしょう。要点を絞り、要望を明確にした上で家裁に書面を提出し、その後のヒアリングがあればしっかりと主張かつ協力し、後見の質の向上を目指しましょう。

※「懲戒請求」に関する解説はこちらをご覧ください

最近のお悩みの傾向について

解説:一般社団法人「後見の杜」宮内康二代表

家族に弁護士等の後見人がついている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。

  • 家族の反対を押し切って自治体が強引に後見人を付ける手続きをした
  • 家裁やリーガルサポートに後見人の文句をいっても取り扱わない
  • 後見制度そのものから離れる方法はないのか

ご自分が家族の後見人をされている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。

  • 家庭裁判所から後見制度支援信託か監督人を選べといわれ当惑している
  • 監督人から不当に文句を言われ、高額な報酬を請求されて困る
  • 財産管理をする後見人がつき被後見人の通帳を出せとせがんでくる

後見人をつけるかご検討中の方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。

  • 後見人って大丈夫なの?
  • 後見制度以外の方法はないの?
  • 家族が後見人になるにはどうしたらいいの?

私たちは、後見される側やそのご家族の立場にたって、
一つ一つの後見事例の適切な運用をサポートします。
複雑な後見制度を紐解き、その運用を改善・向上していきましょう。

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