良い後見人を紹介して欲しい
良い後見人の条件
「よい後見人を紹介して欲しい」と依頼を受けることがあります。「よい後見人というより、本人にあった後見人ですね」と回答しています。医者でも同じでしょうが、「良さ」=「専門性」+「人柄」と思っているからです。3000名を超える後見人の育成をしてきた関係で、良質と思われる後見人や後見法人との繋がりがありますが、全国津々浦々ではない現状ですので、ご期待に応えられる場合とそうでない場合がありますのでお含みおきください。
1.財産管理は最も簡単な仕事
後見人の専門性というと「家裁に出す書類の書き方」「財産管理の方法」「身上監護の方法」と思われがちです。家裁に出す書類は誰でも書けます。必要に応じて家裁からヒアリングもありますので提供すべき情報の補充は可能です。書類は、見た目は面倒そうでも記載すべき事柄の趣旨を理解すれば誰でも書けます。面倒くさがらずに自分でやってみましょう。
財産管理は後見業務の中で最も簡単な仕事です。後見人によって結果の差が出ないからです。保険でいえば、誰が請求しても給付金額は同じでしょう。不動産は相場次第ですが雲泥の差が出ることはないからです。被後見人に多額の財産や多数の権利証があっても、管理するのは銀行や金庫であり後見人が気をもむ話ではありません。
2.難しいのは介護等の手配能力
身上監護を、医療や介護の手配や支払いとするならば、支払いは誰でもできるでしょう。難しいのは手配です。手配の結果、差がでるからです。特に、施設選びは最も難しい作業の一つです。一度決めたら変更しづらいし、本人が、誰と話すか、何を食べるか、どのような景色を見るかなど、24時間365日の生活がほぼ決まってしまうからです。これゆえ、海外では、財産管理人より身上監護人の方が格上とされています。逆の印象を持っている方が日本には多いようですが、根拠のないイメージは今すぐ払拭すべきでしょう。
なお、医療、介護、作業所等の資源には地域格差があります。後見を通じて浮き彫りになる格差問題はさておき、現況でベストの選択をすることに注力しましょう。
3.最も難しいのは本人を理解すること
後見人の仕事の中で最も難しいのは、被後見人の気持ちを理解することです。これは誰がやっても難しく、あるいは、誰もできないかもしれません。
知識補充として「認知症を学ぶ」とか「高次脳機能障害を学ぶ」という勉強会がありますが、それが逆効果になっている現場も散見します。「認知症だから」とか「高次脳機能障害だから」とレッテルを張ってしまう後見人が多いからです。求められるのはそのような「分類化する能力」ではなく、認知症だけどこの人のこの部分は本気だからできる・いける・大丈夫、という洞察力と実行力です。この点、親、配偶者、子、兄弟姉妹あたりが、その順番で有能優位と思います。その家族をないがしろにする後見人が良くないことは言うまでもありません。
4.障害者の親御さんがすべきこと
「うちの子はできない」「うちの子は無理」という親御さんは少なくありません。出産や事故以降ずっと関わってきた方が言うのだからそうなのかもしれません。しかし、それでは後見人が関わる意味が半減します。後見制度を使っても、財産管理人や身上監護人にとどまり、後見人の域まで達しません。後見の質も本人の社会経済性も向上しません。
後見の最大の特徴は同意権と取消権です。同意権と取消権は、例えば、買い物が上手くできたら本人を褒め、失敗したら、本人ではなく取引の相手側に引いてもらうことができる思想であり道具だからです。当社では、本人と一緒に銀行に行き、ATMでお金を引き出す作業を行っています。そうして、「お金に関する意識」を高めていくことで、親亡き後も、本人と後見人が対等に付き合っていけると思っているからです。お子さんにとって良い後見人はいません。後見制度を使う前に、「お子さんにあった後見人」を1~2年かけて育成することが親御さんがすべきこと・できることと思います。
まとめ
「被後見人本人をよくよく知っている、もしくは、誰よりも知ろうとしている」ことと「地域にある医療や介護等の資源を理解して選ぶ能力」がある人が、良い後見人と言えるでしょう。この点、地域を知っている地域の人に、本人を理解してもらうよう、家族や本人が努力・協力することが必要です。この努力や協力を不要とする後見人は後見人とはいえません。せいぜい身上監護人か、単純事務の財産管理人に過ぎないからです。良質な後見が全国に整備されるよう関係者で頑張りましょう。
最近のお悩みの傾向について
解説:一般社団法人「後見の杜」宮内康二代表
家族に弁護士等の後見人がついている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家族の反対を押し切って自治体が強引に後見人を付ける手続きをした
- 家裁やリーガルサポートに後見人の文句をいっても取り扱わない
- 後見制度そのものから離れる方法はないのか
ご自分が家族の後見人をされている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家庭裁判所から後見制度支援信託か監督人を選べといわれ当惑している
- 監督人から不当に文句を言われ、高額な報酬を請求されて困る
- 財産管理をする後見人がつき被後見人の通帳を出せとせがんでくる
後見人をつけるかご検討中の方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 後見人って大丈夫なの?
- 後見制度以外の方法はないの?
- 家族が後見人になるにはどうしたらいいの?
私たちは、後見される側やそのご家族の立場にたって、
一つ一つの後見事例の適切な運用をサポートします。
複雑な後見制度を紐解き、その運用を改善・向上していきましょう。