後見人と上手くいかないときの対応策「懲戒請求」とは?
5つの対応策から「懲戒請求」について解説
「後見人とうまくいかない」というご相談は多いです。このような状態になると後見人と話し合っても埒があかないでしょう。そのようなときのために「懲戒請求」「解任請求」「監督処分」「後見人の追加」「許可審判」という5つの手続きが用意されています。本記事ではその中から懲戒請求にフォーカスを当てご紹介します。
懲戒請求は、後見人である前に、「弁護士や司法書士として問題があるので注意されたし」という主旨で、弁護士会や法務局へ苦情を出す仕組みです。懲戒請求は誰でもできますので、おかしいと思えば、被後見人およびそのご家族・ご友人・ケアマネジャーなどが懲戒請求してください。
1.懲戒請求書の書き方
弁護士や司法書士は、弁護士法や司法書士法、弁護士会会則や司法書士会会則、および、職務基本規程等により、その言動がルール化されています。例えば、「品位を保持して仕事をする」という主旨のルールがあります。しかし、知的障害をもつ被後見人の言動を見て「ペットみたいだな」と言いケラケラ笑った弁護士がいます。被後見人が言うことを聞かないので路上で被後見人を蹴った司法書士もいます。このような弁護士や司法書士は「品位保持」のルールに違反していますから、そのことを記載し、懲戒請求書を書き上げるのです。単に不満を並び立てても効果はありません。懲戒請求書を書くときは、後見人である弁護士や司法書士の言動がルールに違反していることをしっかりと記載することが重要です。
2.ルール違反の事例
品位保持のほか、どのようなルールに違反することが多いか、事例を見てみましょう。
1.「あなたが後見人になれますよ」と家族に言いながら、その家族が後見人に選任されなかった場合
「受任の際の説明等(弁護士職務基本規程29条)」に違反していると思われます。同条には「弁護士は、依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにもかかわらず、その見込みがあるように装って事件を受任してはならない」と規定されているからです。
2.後見人が施設費用や税金を納めず家族に督促が来る場合
「依頼事件の処理(司法書士会会則)」に違反していると思われます。同会則(条数は都道府県単位の司法書士会会則をご覧ください)には「会員は、特別の理由がない限り、依頼の順序に従い、速やかに業務を取り扱わなければならない。」と規定されているからです。
3.被後見人と後見人の間の信頼関係が崩壊しているのに後見人が辞任しない場合
弁護士職務基本規程43条において「弁護士は受任した事件について依頼者との間に信頼関係が失われ、かつ、その回復が困難なときは、その旨を説明し、辞任その他の事案に応じた適切な措置をとらなければならない。」と規定されており、信頼関係が崩壊しているのに辞めない場合はこの規定に違反していると思われます。
3.懲戒請求の効果
懲戒請求を受け、弁護士会や法務局は調査を開始します。調査対象となった弁護士や司法書士は懲戒内容について弁明します。弁明しなければ処分されてしまうので必死に弁明することになります。この過程で、後見人としての態度が是正されたり、反感を買ってより悪くなったりもします。あっさり後見人を辞任する人もいます。いずれにせよ、調査を踏まえ、数か月後に懲戒請求の結果が出ます。
まとめ
おかしいなと思う言動を繰り返す後見人が弁護士や司法書士である場合、それぞれの所属・監督機関に懲戒請求してみましょう。懲戒請求をする場合、その者の言動が、どのルールに違反しているかを照合させて書くと効果的ですので、弁護士法や司法書士会会則などを眺めながら、懲戒請求書を書き上げてください。懲戒調査の過程で、後見人としての態度が是正されたり、反感を買ってより悪くなったりもします。あっさり後見人を辞任する人もいます。何もしないより意味があると思いますので、誰でもできるように準備されている懲戒請求制度を活用してください。後見人が行政書士、社会福祉士、税理士、社会保険労務士、精神保健福祉士の場合も、同様の制度がありますのでご活用ください。
最近のお悩みの傾向について
解説:一般社団法人「後見の杜」宮内康二代表
家族に弁護士等の後見人がついている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家族の反対を押し切って自治体が強引に後見人を付ける手続きをした
- 家裁やリーガルサポートに後見人の文句をいっても取り扱わない
- 後見制度そのものから離れる方法はないのか
ご自分が家族の後見人をされている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
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- 財産管理をする後見人がつき被後見人の通帳を出せとせがんでくる
後見人をつけるかご検討中の方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 後見人って大丈夫なの?
- 後見制度以外の方法はないの?
- 家族が後見人になるにはどうしたらいいの?
私たちは、後見される側やそのご家族の立場にたって、
一つ一つの後見事例の適切な運用をサポートします。
複雑な後見制度を紐解き、その運用を改善・向上していきましょう。