銀行が認知症の家族のお金は下ろせないという、どうすればよいでしょうか
認知症に加えてお金の制限はキツ過ぎる
認知症でなくても家族のお金を下ろすことはできません。ただ「親が認知症になって、立て替えもかさんでいるし、後見人をつけると費用もかかるし、なんとかならないか」という相談が増えていることも事実です。このような場合、二つの方法を試してください。
一つは、銀行に対し、正直に事情を話して、払い出してもらうことです。本人のために立て替えたことを示す請求書や領収書を見せたり、銀行に迷惑をかけない旨相続人全員で一筆書く等してみましょう。「今回だけですよ」といって応じてくれる場合もあります。認知症の親がおぼろげながらでも「うん」といえるような場合は、銀行マンに親のところへ来てもらい親の意思を確認してもらうのは効果的です。預金契約当事者の意思表示ですからね。
もう一つは、カードがあればカードで、カードがなければ親からの委任状を通じて、親の口座からお金を下ろす方法です。使い込むわけではないので正々堂々とやりましょう。下ろしたお金は、これまでのそしてこれからの親の費用に使いましょう。病気に加えてお金の制限はキツ過ぎますからね。
1.後見人がついた口座取引における銀行のミス
〇「今日は取引できない。一週間ほど時間をください」という銀行は少なくありません。後見口座にどう対応したらよいのかわからない内部事情(瑕疵)があるからです。銀行の都合で、預金者(ないし後見人)を待たせるのはよくありません。いつでも返すという約束(消費寄託契約)で銀行に預けているわけですから、すぐに払ってもらいましょう。
〇保佐人や補助人の代理権ないし同意権の権利区分や、後見人等と預金者本人の優劣が区分できず、対応を間違える銀行は多いです。後見人が複数いたり、監督人がついている場合も対応に苦慮する銀行は少なくありません。
〇預金者である被後見人等が「残高を見たい」といっても「後見人の許可が必要」という銀行があります。お金を下ろすわけでも、口座を解約するわけでもないので、見せてくれても良いでしょう。銀行に「見るだけでもダメなんですか?」と聞いてみてください。
2.金融庁の「金融サービス相談室」に通報する
銀行、保険、証券会社の対応がおかしいと思う場合、金融庁の金融サービス相談室に事情を説明してください。後見に詳しい人が必ずしも対応するわけではありませんが、対象となる金融機関にきちんとやるよう連絡してくれるでしょう。
「金融庁・金融サービス相談室」
○電話番号での通報 :0570-016-811
○ファックスでの通報 :03-3506-6699
○ウェブサイトでの通報:https://www.fsa.go.jp/opinion/
○文書(郵便)での通報:〒100-8967 東京都千代田区霞が関3-2-1 中央合同庁舎第7号館金融庁 金融サービス利用者相談室
3.業界団体に通報する
銀行、保険、証券会社の対応がおかしいと思う場合、業界団体の相談所に事情を説明してください。後見に詳しい人が必ずしも対応するわけではありませんが、対象となる金融機関にきちんとやるよう連絡してくれます。
〇「全国銀行協会相談室」:03-5252-3772
〇「全国しんきん相談所」:03-3517-5825
〇「生命保険相談所」 :03-3286-2648
〇「そんぽADRセンター」:03-4332-5241
〇「証券・金融商品あっせん相談センター」:0120-64-5005
まとめ
「認知症になったら銀行の態度が急変した」「後見制度を使ったら銀行の態度が激変した」という方は多いです。「長年の付き合いだったのに…」と残念がる方も少なくありません。お金があるのに使えないのは本当につらい。とにかく、銀行に対し、正直に相談するか、形式的処理をするか、ケースバイケースで対応してください。後見に詳しい金融機関は多くありません。金融機関の対応がおかしいなと思ったら金融庁や業界団体に通報するのも一助でしょう。もちろん当相談室では一般の方および金融機関からのご相談に対し専門的サポートをいたします。
最近のお悩みの傾向について
解説:一般社団法人「後見の杜」宮内康二代表
家族に弁護士等の後見人がついている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家族の反対を押し切って自治体が強引に後見人を付ける手続きをした
- 家裁やリーガルサポートに後見人の文句をいっても取り扱わない
- 後見制度そのものから離れる方法はないのか
ご自分が家族の後見人をされている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家庭裁判所から後見制度支援信託か監督人を選べといわれ当惑している
- 監督人から不当に文句を言われ、高額な報酬を請求されて困る
- 財産管理をする後見人がつき被後見人の通帳を出せとせがんでくる
後見人をつけるかご検討中の方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 後見人って大丈夫なの?
- 後見制度以外の方法はないの?
- 家族が後見人になるにはどうしたらいいの?
私たちは、後見される側やそのご家族の立場にたって、
一つ一つの後見事例の適切な運用をサポートします。
複雑な後見制度を紐解き、その運用を改善・向上していきましょう。