後見に関するお悩みの実情と対策
どこに相談してよいかわからなかった
後見人をつける“前”の相談で多いのは「銀行から後見制度を利用するよう言われたが、家族でも後見人になれるのか、弁護士が後見人になった場合の費用はいくらになるか」や「自治体や兄弟姉妹が老親に後見人を付ける申し立てをしてしまった。なんとか阻止できないか」という内容です。後見人がついた“後”の相談で多いのは「弁護士が後見人になったが、本人に会いに来ない、生活費を渡さない、不動産を売ろうとする」や「家裁が後見人や監督人を追加してきた、どのように対応したらよいか」という内容です。いずれも、当事者のご家族からの相談がほとんどです。家裁、自治体の後見センター、弁護士ほかに相談したが「明確な回答は得られなかった」と皆さん仰います。そのような機関は、後見の供給側ですから、後見の利用者側が抱く疑問について好んで回答するわけがありません。なるほど「どこに相談して良いかわからなかった」とい言う方が多いわけです。
最初に説明してくれれば後見制度は使わなかった
後見人をつける前の相談に対する“回答”で多いのは「法定後見を使うしかないですね。家裁が後見人を決めてくれるので安心です」や「後見人を付ける申し立て書類はこれです。書くのが大変なら司法書士に頼むとよい」というものです。後見制度以外の方法はないのか、家族以外の者が後見人になる可能性はどれくらいか、という代替策やリスクについて具体的に説明できるところは皆無でしょう。ついた後見人や監督に対する不満に対しては「後見人と話しあったほうが良い」や「家裁に相談したらどうか」に留まるか「あきらめるしかない」「あなたの考えが間違っている」と言われる“回答”が多いようです。「最初にきちんと説明をしてくれれば後見制度なんか使わなかった」「後見制度を止めたい」と後に嘆く方が多い実情はとても残念なことです。
1.後見を使う前に後見の「必要度」を査定しましょう
認知症や知的・精神障害イコール後見制度ではありません。本人が、名前を書けたり、お金のことは誰々に任せると言えれば、銀行や不動産取引ができることが多いからです。本人と取引をするか否かを決めるのは取引先であり自治体や弁護士でありません。そこで!後見人を付ける必要度を査定してみましょう。7つの質問に回答すると後見人の必要度が何点と表示されます。点数を踏まえ後見制度を利用するか否か、家族で話しあってみてください。
2.後見を使う前に「後見人に払う費用」を試算しましょう
後見人に払う費用について相談すると「月2万円程度」や「家裁が決めるからわからない」という回答が返ってくることが多いです。しかし、これではいくらになるかわかりません。そこで!後見が始まってから終わるまでの総額を事案に当てはめて試算してみましょう。その費用を払ってまで後見制度を利用するか、ご家族で検討してみて下さい。場合によっては後見制度以外の方法もあり得るでしょう。
3.ついている後見人の「良し悪し」をチェックしましょう
後見人の権利や義務を知らない人は少なくありません。例えば、「後見人が本人(被後見人)に会いに来ないこと」に苦情を唱える人がいますが、それだけでは後見人の義務を追及することはできません。しかし、「後見人が本人に会わないことで、本人に適切な医療や介護が手配されず、本人の健康や生活の質が落ちた」となれば、後見人の不手際を問うことが可能になります。そこで!ついている後見人の良し悪しをチェックしてみましょう。点数が低ければ、家裁に対し、後見人の解任請求や監督処分を申し立てることになります。併せて、後見人が弁護士であれば地元弁護士会へ、司法書士であれば地元法務局へ、懲戒請求することになります。これらの改善策により、後見人の言動が是正されたり、後見人が辞任・変更されることもあります。
まとめ
後見の利用前の相談については、リーフレットを見せて制度の説明をするところはありますが、利用者の立場で、個別案件に対し、後見の必要度や費用、リスクやコストについて説明するところはほぼありません。後見制度を利用した後に「知らなかった・・・」と言っても後の祭り。そのようなことにならないよう、後見制度を使う前に、後見の必要度と費用について査定してみてください。その費用を払ってまで後見制度を使うか、他の方法は無いか、ご家族でしっかり検討して下さい。ついた後見人に関するトラブルについては、家裁に愚痴を言ったり上申書を書いても改善は期待できません。まずは、後見人の良し悪しをチェックしてみてください。そのうえで、後見人が義務を果たしていないことをベースに、家裁に対しては解任請求や監督処分を、地元の弁護士会や法務局に対しては懲戒請求します。これにより、後見人の業務改善や人事変更へ繋がることが多いです。後見の質の向上を目指し、社会的に用意されたこれらの改善・救済制度をしっかり活用していきましょう。