後見はサービス業になる
契約社会である以上、誰かに手続きや判断を頼まざるを得ない人はいます。日本は世界に冠たる長寿国、増加する認知症高齢者や知的・精神障害者の経済社会への参加をどう維持・推進していくかという国家的課題もあります。日本において後見という概念が実業にどう落とされていくか、世界が注目しています。欧米並みに後見制度や運用水準を持っていけばよいという話ではないのです。むしろ、独自の発想が必要でしょう。
結論からいうと、後見はサービス業になるでしょう。後見の提供者は、家族か弁護士か社協かという属性的三択ではなく、不動産に強い後見、金融に強い後見、医療・介護に強い後見、という業務内容的三択になるでしょう。
後見の関与策も変わるでしょう。一度ついたら離れないというスッポン後見ではなく、業務ごとに就任し終わったら辞任するスポット後見になるでしょう。これに伴い、後見業務の内容と単価もリスト化されるでしょう。何をいくらでやってくれるかわからなければ誰も買ってくれないからです。家裁が決めた弁護士だから大丈夫ということはあり得ないでしょう。
後見は社会保険化しませんから準市場になりません。100%自己負担の民間サービスになるでしょう。もしかしたら監督費用は公的負担で良いかもしれません。労働集約型になるので利益率は高くありませんが、重要で必要な社会性の高い民間サービスです。
1. 後見は誰のため?
後見は誰のためにある?と聞かれたら「認知症高齢者や知的・精神障害者のためにある」と答えるでしょう。「後見人のため」と揶揄する人もいるかもしれません。
いずれも正解ですが、それら2つだけで不正解です。「サービス提供者のためにある」という3つ目の正解があるからです。つまり、高齢者や障害者に商品やサービスを提供する銀行、保険、証券、不動産、医療、介護、旅行、その他の事業者のために後見があるという見方です。
認知症社会では、後見人がいないと商品やサービスは売れません。契約が取れませんから買ってもらえないのです。高齢者や障害者が持っているものも売ってもらえません。売るという意思表示ができないから買えないのです。
すると、経済が動きません。後見が、認知症社会における経済の安定および活性化の潤滑油であることがわかるでしょう。後見は福祉や権利擁護という人がいますが、それは思想の一部で実務ではありません。後見はもっと構造的で、動きのあるものなのです。
2. 内容ごとに値段をつける
後見人が、銀行に行ってお金を下ろしたら1回3千円、ケアカンファレンスに出たら1回1万円、不動産を売ったら○○円ないし○○%、というように後見という概念がメニュー化され単価がつくでしょう。
後見人の仕事は「財産管理」と「身上監護」、これに加えて「見守り」と「死後事務」があるという範疇論はもう通用しません。ビタミンもAとかCなどに分かれています。同様に後見の内容も要素分解されるべきでしょう。個別の要素に落とすことで、国民にとって見やすいサービス、家裁等の監督機関にとって管理しやす内容になるのです。
後見業務の細分化は難しくありません。難しいのは価格付けです。同一サービス同一料金とするか、同一労働同一賃金とするか、応能負担にするか応益負担にするか、取引の相手方からもフィーを取るか、公費を入れるかなどを考慮した方がいいからです。えいや!で一度価格設定し、提供しながら落ち着きどころを探すことになるのかもしれません。
3. 後見はビジネスか?
後見は既にビジネス化しています。後見で生計を立てている職業後見人の存在を見れば一目瞭然でしょう。一方で、コンプライアンスもガバナンスもなっていません。やはり、後見はビジネスの前のビジネス化の段階なのでしょう。被後見人と後見人と取引の相手側という当事者の三方がいずれも良しとなれば、誰が文句を言えるでしょうか?誰も言えないでしょう。
問題は、どの企業ないし企業群が、後見サービスを提供するかです。どの企業がやったら親和性があって利用者さんから納得されるか、御一考ください。私の中では、もう決まっていますけどね!
まとめ
後見はサービス業になるでしょう。後見の提供者は、これまでの家族か弁護士か社協等かという属性的三択ではなく、不動産に強い後見、金融に強い後見、医療介護に強い後見、という業務内容的三択になるでしょう。後見の関与も変わるでしょう。一度ついたら離れないというスッポン後見ではなく、業務ごとに就任し終わったら辞任するスポット後見になるでしょう。
後見のメニュー化および単価設定もされるでしょう。何をいくらでどうやってくれるかわからなければ誰も使ってくれないからです。
株式会社日本後見という会社があってもいいと思います。それにより、安く良い代理・代行サービスが提供されるようになれば誰が文句を言えるでしょうか?このような発想も視野に入れるとあるべき後見が見えてくると思います。