障害者の親です。後見制度についてどのように考え、何を実行したらよいでしょうか?
最近よくあるシチュエーション
「障害をもつ子のためにいつ何をしたらよいでしょうか?」と相談される親御さんは後を絶ちません。お子様が未成年だったり、60代だったり、お子様の年齢も様々です。
多くの親御さんが、お子様名義で貯金しますが、それが仇(あだ)となることも少なくありません。お子様に貯金を残せば残すほど、兄弟姉妹が(いても)後見人になれなくなるからです。また、見ず知らずの後見人に1000万円以上の報酬を払うことになるからです。
ここでは、障害を持つ親御さんの立場にたって後見のポイントを解説します。
CASE 1. お子さんが未成年の場合
お子様が未成年の場合、親が子を代理し、親の眼鏡にかなう人に任意後見をお願いしておく方法があります。子供10歳、親40歳としましょう。親はあと40年は頑張れるでしょう。つまり、40年後に備え、親権者の立場を有効に活用できる間に任意後見を使うのです。
こうすることで、見ず知らずの人が子供の法定後見人になることを防げます。費用も、親御さんと頼まれた人の間で決めるので納得でしょう。取消権は使えませんが、何かあったら、そのときに任意後見人に考えてもらえばよいでしょう。
1-1.親権者として、子に代わって、任意後見契約を結ぶ
誰に頼むかが最大の問題です。障害を持つお子様に成人している兄弟姉妹がいればその人に頼むとよいでしょう。兄弟姉妹に負担をかけたくない場合は、兄弟姉妹を任意後見人とし、任意後見人の代わりに動いてくれる人を後で兄弟姉妹が決められるように設定しておく方法が有効です。兄弟姉妹に頼まない(頼めない)場合は、心あたりの個人や法人に頼むことになるでしょう。あるいは、心あたりの個人や法人を任意後見受任者とし、任意後見監督人候補者を兄弟姉妹にしておく方法もあります。
1-2.何かあったら、その時に、任意後見人に考えてもらえばよし
任意後見を活用するので、法定後見の特徴である取消権を行使できないことになります。そのため、もし、お子様が、悪質商法に遭ったり、押し買いや押売りにあったら、任意後見人に裁判を起こしてもらえばよいでしょう。裁判で勝てば、結果的に取消権と同じ効果が得られるからです。訴訟の弁護士費用はせいぜい30万円程度です。法定後見人に毎月発生する費用の総額に比べれば、一桁も二桁も安く済むはずです。法定後見(の取消権)にこだわる必要は特にありません。
CASE 2. お子さんが成年の場合
お子様が成年の場合、お子様と誰かで任意後見契約を結んでみましょう。任意後見は公証人次第です。障害があるからといってあきらめてはいけません。実際、最重度の知的障害者(60代)が50代の妹さんと任意後見契約を結んだ例もあります。
法定後見を使う場合は、お子様名義にしていた預貯金は親の口座へ回収してください。それでも、お子様名義の預貯金があれば不動産や保険に換価してください。そのうえで、後見開始の申し立てをするとよいでしょう。これにより、家族等が後見人になる可能性が高まったり、後見制度支援信託や監督人を使う必要性が減るからです。
2-1.知的障害でも任意後見契約はでき得る
任意後見契約は公証人次第です。ある公証人がだめでも、別の公証人は、障害者の意思能力を認め、障害者を委任者とする任意後見契約を公証するかもしれません。具体的には、名前が書けて、お金の事はこの人に頼みたい、という意思表示ができれば、任意後見契約が認められる可能性はあるでしょう。
任意後見に併せて、遺言を書いておくのもよいかもしれません。相続人がいない場合、遺産は国に帰属するだけですので。
2-2.法定後見を使う場合のポイント
ポイントは障害をもつ子に財産を残さないことです。
まず、親御さんのお金をお子様名義の口座に形式上貯めてきた場合は、後見開始の申し立てをする前に、そのお金を親御さん自身の口座に戻してください。こうすることで、本人の口座には本人の財産だけが正確に残ることになります。次に、障害を持つお子様の世話をしてくれそうな人や法人に、親の財産を残すようにしましょう。方法としては、親御さんと世話をしてくれそうな人の間で、負担付遺贈や民事信託を活用するとよいでしょう。
そのうえで、心あたりの人を後見人等候補者に記載しつつ、後見プランのようなものを作成し、後見開始の申し立てをしてください。
まとめ
お子様が未成年の場合、親が子を代理し、親の眼鏡にかなう人に任意後見をお願いしておく方法があります。これにより、見ず知らずの人がお子様の法定後見人になることを防げます。お子様が成年の場合、まずは、お子様と誰かで任意後見契約を結んでみましょう。任意後見がダメな場合は法定後見しかありませんが、後見開始の申し立てをする前に、親御さんとお子様の財産を整理してください。これにより家族等が後見人になる可能性が高まったり、後見制度支援信託や監督人を使う必要性が減るからです。
最近のお悩みの傾向について
解説:一般社団法人「後見の杜」宮内康二代表
家族に弁護士等の後見人がついている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
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私たちは、後見される側やそのご家族の立場にたって、
一つ一つの後見事例の適切な運用をサポートします。
複雑な後見制度を紐解き、その運用を改善・向上していきましょう。