2017.12.21

本人への事前ヒアリングなしで後見をスタートさせることはできるのでしょうか?

最近よくあるシチュエーション

家庭裁判所の仕事ぶりに違和感を覚える人が急増しています。なかでも多いのが、「後見人を付ける前に、被後見人に対し家庭裁判所から一言もなかった。それなのに後見を始めてよいのでしょうか?」というものです。答えはNO。実際、家庭裁判所の手続き飛ばしの問題をめぐり、いくつかの裁判が行われ、家庭裁判所が下した後見開始の審判が高等裁判所で取消される事例も出ています。

ここでは、後見人をつける前に行う本人へのヒアリングについて解説します。

ポイントは家事事件手続法120条

家庭裁判所の業務内容や事務手続きを定める法律を「家事事件手続法」といいます。その120条には「家庭裁判所は、後見人をつける前に、被後見人となるべき本人にヒアリングしなければならない」ということが記載されています。事前ヒアリングに関する統計は公表されていませんが、相当数において事前ヒアリングは割愛されているようです。

なるほど、「ヒアリング無しで後見人がついた」ことに違和感を覚える人がいるわけです。

1.事前ヒアリングが飛ばされる理由

被後見人になることで本人に生じる窮屈さや費用負担は計り知れません。例えば、被後見人になると、銀行に行っても相手にされなくなります。自分のお金を自由に使えなくなります。後見人に払う費用もばかになりません。月5万円として年間60万円、10年で600万円に達するからです。

「このような窮屈さや負担を強いることになる後見をスタートさせる前に本人の気持ちを確認しておこう」ということで導入されたのが、家事事件手続法120条(陳述の聴取)です。それがなぜ形骸化しているのでしょうか?

背景には、ただし書きがあります。

家事事件手続法120条
「家庭裁判所は、次の各号に掲げる審判をする場合には、当該各号に定める者(第一号から第三号までにあっては、申立人を除く。)の陳述を聴かなければならない。ただし、成年被後見人となるべき者及び成年被後見人については、その者の心身の障害によりその者の陳述を聴くことができないときは、この限りでない。
一 後見開始の審判 成年被後見人となるべき者
(省略)
三 成年後見人又は成年後見監督人の選任の審判 成年被後見人となるべき者又は成年被後見人
(省略)」となっているのです。

2.植物状態以外は事前ヒアリングを省くことはできない

120条のただし書き「その者の心身の障害によりその者の陳述を聴くことができないとき」とはどのようなときなのでしょうか?それは「植物状態」の場合と考えると良いでしょう。逆に言えば、いわゆる植物状態以外は事前ヒアリングは義務化されている、植物状態以外は本人に対する事前ヒアリングを省くことはできない、ということです。

保佐の場合は130条で、補助の場合は139条で、任意後見の場合は220条で、それぞれ審判前の本人ヒアリングが義務付けられています。ご自身のケースに応じて条文の内容をご確認ください。

なお、保佐と補助の場合、ただし書きはありませんので、本人申し立ての場合を除き、事前の本人ヒアリングを飛ばして審判を下すことはできません。

3.本人申し立てと本人ヒアリングの関係

「本人が申し立てをしている場合、申し立ての時点で自らにおよぶ窮屈や費用負担を理解しているから、改めてヒアリングしないで良い」という考えがあります。その考えは120条の「(第一号から第三号までにあっては、申立人を除く。)」という部分に明文化されています。

しかし、どれだけの人が、法定後見を利用することに伴う窮屈や費用負担を理解しているでしょうか?保佐や補助ならまだしも、本人による後見開始の申し立ての場合、本人が後見利用に伴うリスクを予測できると考える方のは不自然でしょう。さらに悪いことに、「本人申し立ての場合は事前ヒアリング割愛可能」という現行ルールを悪用し、とにかく本人申し立てにしてしまおうという輩が実存することも事実です。この点、別のところで解説する家事事件手続法118条とのバランスを含め、早急に改善されるべき事項と思われます。

4.本人への事前ヒアリング飛ばしを見つけたら

後見をスタートさせる前の本人ヒアリングが省略されていれば、また、そのことで結果が本来あるべきものと違うように思う場合は、改善策を取りましょう。具体的には、ヒアリング飛ばしを知ったのが後見開始の審判から2週間以内であれば「即時抗告」をします。審判が確定した後にヒアリング飛ばしを見つけたら「再審請求」をします。即時抗告は難しくありませんが、再審請求の手続きは難しいので弁護士さんに頼むと良いでしょう。

まとめ

被後見人になることで本人に生じる窮屈さや費用負担は計り知れません。そのような窮屈さや負担を強いることになる後見をスタートさせる前に本人の気持ちを確認しておこうということで導入されたのが、家事事件手続法120条(陳述の聴取)です。しかし、植物状態でもないのに事前ヒアリングを省略して後見をスタートさせる審判を下してしまう運用が増加しています。そのような事例を発見したら、「即時抗告」や「再審請求」を通じ、ルール通り本人の意思を尊重した運用をやり直すようしていくことが望まれます。

最近のお悩みの傾向について

解説:一般社団法人「後見の杜」宮内康二代表

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後見人をつけるかご検討中の方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。

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私たちは、後見される側やそのご家族の立場にたって、
一つ一つの後見事例の適切な運用をサポートします。
複雑な後見制度を紐解き、その運用を改善・向上していきましょう。

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