後見人の身分や権利を証明するものはありますか?
最近よくあるシチュエーション
知らない人に「私が後見人になりました」とだけ言われても、具体的なことはわかりません。実際、「親に後見人がついたのですが、何をどこまでどのようにやるのかわかりません」とか「親が、誰かと任意後見契約を結んだようですが、費用を含め、具体的な契約内容がわかりません」というご相談が増えています。後見人や監督人を名乗る詐欺も登場しているなか、後見人の身分や権利を確認することはますます重要になっています。
手続きの流れとポイント
後見人の氏名・権限・住所等を知りたければ、法務局に行き、550円払って、後見登記の交付を求めてください。いつ、どこで、誰が、誰の、後見人になり、何ができるのかが記載されている登記事項証明書を入手することができます。
登記事項証明書を入手できるのは後見する人、後見される人、監督人、4親等以内の親族等に限られていますのでご注意ください。登記事項証明書を入手できる人から頼まれた人が代理代行して登記事項証明書を入手することも可能です。また、法務局に行かなくても、郵送での入手も可能です。
1.法務局に行く前に用意するもの
後見の登記を入手したい人と被後見人(任意後見の場合は委任者)の関係を示す資料として「戸籍」が必要です。自治体で戸籍を入手してください。登記を入手したい人の「身分証明」も必要です。具体的には運転免許証、パスポート、保険証などを用意して下さい。後見の登記を入手したい人の「印鑑」も必要です。実印でなくても大丈夫です。後見登記の費用は「550円」です。法務局で550円の収入印紙を購入し、交付申請書に貼り付けます。
法務局で請求すればすぐに登記事項証明書がもらえます。郵送も可能なので、心あたりの法務局に電話して、後見登記の交付についてお尋ねください。
全国の主要法務局の連絡先⇒http://www.moj.go.jp/MINJI/minji10.html
2.法務局に行ってからすること
「登記事項証明申請書(成年後見登記用)」の必要事項を記載し提出します。
下記の記載例を参考に記入し提出してください。
記載例1http://www.courts.go.jp/kumamoto/vcms_lf/17_toukijikousyoumeisinseisyo.pdf
記載例2http://houmukyoku.moj.go.jp/hiroshima/content/000128527.pdf
3.登記事項証明書を入手した後:任意後見の場合
まず、任意後見監督人がついているか否かを確認してください。任意後見監督人の記載がなければ、任意後見契約はまだスタートしていません。よって、委任者が希望すれば、契約の内容変更や解除は可能です。
任意後見監督人がついていれば任意後見契約は正式にスタートしています。この場合、代理権目録の内容を確認してください。任意後見人ができるのは代理権目録に記載された内容に限られていますので、それ以外のことをしている場合は改善に向けた手続きを取ることをお勧めします(詳しくは当社へご相談ください)。
登記事項証明書の一部として「監督人の同意を要する行為」という目録がついていることがあります。これは「ここに書いてある行為を任意後見人が行う場合は任意後見監督人のOKが必要」ということです。実際にそのような運用になっているかを監督人に確認するのもよいでしょう。
任意後見の登記には、費用や報告の頻度・方法についての記載はありません。そのような具体的な内容を知りたい場合は任意後見契約書を見るようにしてください。任意後見契約書がない場合、任意後見の登記事項証明を持って、任意後見契約の委任者(頼んだ人)と一緒に、任意後見契約をした公証役場へ行き、公証役場で保管している任意後見契約書を見せてもらったりコピーすることで確認してください。
4.登記事項証明書を入手した後:法定後見の場合
後見・保佐・補助のいずれかが、既に正式にスタートしているでしょう。後見人等に質問があれば、登記事項証明書に記載されている後見人等の住所あてに手紙を書いて聞いてみましょう。
登記を見ると、後見人が二人いる場合があります。その場合は、それぞれが独立して仕事ができる独立型、それぞれの役割が異なる分掌型、二人の意見が合致しないと仕事ができない共同型、の3パターンのいずれかとなります。
保佐の場合、代理行為目録がついていることが多いです。補助の場合、代理行為目録と同意行為目録の二つがついていることが多いです。いずれも、書いてある内容だけを、保佐人や補助人が、代理したり同意(取消)したりできるということですので、実務と記載内容を比較確認してください。
保佐の場合は同意行為目録がなくても銀行取引や不動産取引等については当然に同意権がありますので、誤解のないようお取扱いください。
まとめ
後見人の氏名・権限・住所等を知りたければ、法務局に行き、550円払って、後見登記の交付を求めてください。いつ、どこで、誰が、誰の、後見人になり、何ができるのかが記載されている登記事項証明書を入手することができます。登記を取ったら、記載内容を確認してください。必要があれば後見人や監督に質問状を出すとよいでしょう。
最近のお悩みの傾向について
解説:一般社団法人「後見の杜」宮内康二代表
家族に弁護士等の後見人がついている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家族の反対を押し切って自治体が強引に後見人を付ける手続きをした
- 家裁やリーガルサポートに後見人の文句をいっても取り扱わない
- 後見制度そのものから離れる方法はないのか
ご自分が家族の後見人をされている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家庭裁判所から後見制度支援信託か監督人を選べといわれ当惑している
- 監督人から不当に文句を言われ、高額な報酬を請求されて困る
- 財産管理をする後見人がつき被後見人の通帳を出せとせがんでくる
後見人をつけるかご検討中の方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 後見人って大丈夫なの?
- 後見制度以外の方法はないの?
- 家族が後見人になるにはどうしたらいいの?
私たちは、後見される側やそのご家族の立場にたって、
一つ一つの後見事例の適切な運用をサポートします。
複雑な後見制度を紐解き、その運用を改善・向上していきましょう。