後見人を付けないとどうなるのでしょうか?
最近よくあるシチュエーション
「地域包括支援センターや社会福祉協議会から後見人を付けた方がいい」と言われました。「銀行や病院から後見人を付けないといけない」と言われました。「弁護士や司法書士から後見が必要」と言われました。このように仰る方が急増しています。同じく、「本当に後見人を付けないといけないの?今までは何の問題もなかったのに…」という声や「後見人を付けないとどうなるのか、どこも説明してくれなかった」と振り返る方もいます。後見人を付けないとどうなるかを含め後見の必要性について解説します。
「認知症=後見」ではない!
認知症=後見、知的・精神障害=後見、ではありません。もしそうなら、後見制度の利用者は、認知症高齢者や知的・精神障害者の数と同じく1,000万人を超えているはずです。しかし、実際に後見人を付けている人は20万人程度に過ぎません。逆に言えば、980万人は、認知症や知的・精神障害がありながら後見人を付けていない現状です。後見制度を使う人と使わない人の違いは何でしょうか?
1. 後見の必要性は銀行や老人ホームしだいで決まる
結論からすると、判断能力が不十分となった高齢者や障害者の取引先である銀行や施設が、「後見人を立てていただかないと、当方との取引はできません」と言ってくれば後見が必要となります。逆に言えば、取引先がそのように言ってこない限り、後見は不必要ということです。実際の取引に関係のない自治体や弁護士等の意見は参考程度に留めておくのが賢明です。
2. 後見人を付けないとどうなるか?
後見人を付けないと「その取引」ができなくなります。逆に言えば、ただそれだけです。
例えば、ある老人ホームは入所したければ後見人を付けるよう求めてくるかもしれません。その老人ホームに入るなら後見人が必要となります。しかし、後見人を求めない老人ホームもあるでしょう。そのホームには後見人を付けないでも入所できます。いずれにするかはあなたの自由な選択です。
このことは不動産取引でも同じです。ある不動産屋さんは不動産売買について後見人を付けないと取引ができないというかもしれません。別の不動産屋さんは後見人なしで不動産売買を成立させるでしょう。「後見あり」の不動産屋さんと取引するか、「後見なし」の不動産屋さんと取引するか、それは取引の当事者が自由に決めることです。
遺産分割協議についても同様です。他の相続人が後見人を付けないと遺産分割協ができないという場合、遺産分割協議を終わらせるためには後見人を付けることになるでしょう。しかし、遺産分割協議をすぐにやる必要がなければ後見人を付けず、つまり、遺産分割協議をしなければ良いでしょう。すると「後見人立てなくてもいいから遺産分割協議をしよう」と状況が変化するかもしれません。
以上、後見の必要性は、取引の当事者同士で決まるものとご理解ください。
3. 後見以外の方法も検討しましょう
家庭裁判所の管理下に入る後見制度を使わなくても、取引先との話し合いで、金融・不動産・医療・介護等の取引をすることは可能です。「ご家族の関与があれば大丈夫ですよ」という日本的取引慣行も残っているでしょう。家族がいない場合は、本人に残存する能力を活用して、例えば一筆書いてもらうとか、取引時点での診断書(例:この取引をする判断能力はあると思われるという医者の意見)を取ることで、目の前の取引をする事は可能になるでしょう。
まとめ
認知症=後見、知的・精神障害=後見、ではありません。後見の必要性は、取引の当事者同士で決まります。つまり、本人の取引である銀行、保険会社、証券会社、不動産屋、他の相続人等が後見が必要といえば必要ですし、不要といえば不要となります。実際の取引に関係のない自治体や弁護士等の意見は参考程度に留めておくのが賢明でしょう。
最近のお悩みの傾向について
解説:一般社団法人「後見の杜」宮内康二代表
家族に弁護士等の後見人がついている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家族の反対を押し切って自治体が強引に後見人を付ける手続きをした
- 家裁やリーガルサポートに後見人の文句をいっても取り扱わない
- 後見制度そのものから離れる方法はないのか
ご自分が家族の後見人をされている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家庭裁判所から後見制度支援信託か監督人を選べといわれ当惑している
- 監督人から不当に文句を言われ、高額な報酬を請求されて困る
- 財産管理をする後見人がつき被後見人の通帳を出せとせがんでくる
後見人をつけるかご検討中の方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 後見人って大丈夫なの?
- 後見制度以外の方法はないの?
- 家族が後見人になるにはどうしたらいいの?
私たちは、後見される側やそのご家族の立場にたって、
一つ一つの後見事例の適切な運用をサポートします。
複雑な後見制度を紐解き、その運用を改善・向上していきましょう。