後見人が作った遺産分割協議の内容に従わないといけないのでしょうか?
よくあるパターン
「後見人が、被後見人に有利な遺産分割協議書(案)を提示してきました。これに従わないといけないのでしょうか」や「相続を終わらせたいようで後見人が調停を起こしてきました。でも、被後見人も私たちもお金に困っていないし、先でいいと思うのですが、どうしたらよいでしょうか」などの相談が増えています。
後見人といえども一相続人の代理人に過ぎません。つまり、他の相続人と同等です。よって、後見人に左右されず、相続人として思うように振る舞ってください。
相続が後見人にとって二度三度おいしい実情
被後見人が相続すると、後見人は相続ボーナスがもらえます。相続した分、被後見人の預貯金が増えるので後見人の基本給も増えます。つまり二度おいしい仕事です。不動産を相続して、それを売却したら、不動産売却ボーナスもつきます。三度おいしい仕組みです。後見人が相続を急ぎたい理由の一端はわかるでしょう。
ただ、被後見人がお金に困って相続すべき時は、それに協力するのが他の相続人のマナーと言えるでしょう。
1.後見人が公正証書による生前贈与契約を無効といってきた
「後見人が、“被後見人が、被後見人になる前にした生前贈与契約は無効である”といってきました。」という相談があります。裁判になり、後見人のいう通り、その契約は無効という判決が出ました。この事例を通じ、「公正証書だから大丈夫」ということではないことがわかるでしょう。認知症になった親が贈与を受けた娘に対し「無効の確認訴訟」をするわけですから歪(いびつ)な感じもします。実際、贈与したお父さんは「なんでそんなことをするんだ」とご立腹でした。赤の他人が後から来て、家族間の約束を壊すとは大迷惑ともいえますが、後見人がつくとこのようなこともあるということは知っておきましょう。
2.相続財産管理人にもなるつもりの後見人
被後見人が亡くなると後見は終了します。事務的には、後見人は相続人の誰かに被後見人の遺産を引き渡します。後は相続人の好きにしてもらえばよいのです。ただ、相続人間の仲が良くないことを理由に、被後見人が亡くなっても、相続人に遺産を引きつかず、自分を相続財産管理人にするよう家裁に申し立てた後見人(弁護士)がいます。被後見人が亡くなっても稼ごうとする後見人の態度は好ましいものではありませんでした。相続人間の仲を悪くするような手紙をあちこちに出していたこともわかり興ざめです。結果的に、家裁は、別の弁護士をそのケースの相続財産管理人に選任しました。
まとめ
相続人の一人が認知症や知的・精神障害であることを理由に「お父さんの相続をやるには後見制度を使わないといけませんね」という意見ないし誘導がありますが、それは必ずしも正解ではありません。法定相続で処理したり、残存する能力を活用して遺産分割協議を行うことができることもあるからです。「後見は相続のためだけだと思っていた、相続が終わっても後見が続くことは誰も教えてくれなかった」という人が増えていることは残念なことです。後見の利用を勧める人は後見が終わるまでの全体を教示する必要があることがわかります。
最近のお悩みの傾向について
解説:一般社団法人「後見の杜」宮内康二代表
家族に弁護士等の後見人がついている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家族の反対を押し切って自治体が強引に後見人を付ける手続きをした
- 家裁やリーガルサポートに後見人の文句をいっても取り扱わない
- 後見制度そのものから離れる方法はないのか
ご自分が家族の後見人をされている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家庭裁判所から後見制度支援信託か監督人を選べといわれ当惑している
- 監督人から不当に文句を言われ、高額な報酬を請求されて困る
- 財産管理をする後見人がつき被後見人の通帳を出せとせがんでくる
後見人をつけるかご検討中の方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 後見人って大丈夫なの?
- 後見制度以外の方法はないの?
- 家族が後見人になるにはどうしたらいいの?
私たちは、後見される側やそのご家族の立場にたって、
一つ一つの後見事例の適切な運用をサポートします。
複雑な後見制度を紐解き、その運用を改善・向上していきましょう。