任意後見のポイントを教えてください
自分で創る後見
認知症になったら「誰を後見人にするか」「何を、いくらでしてもらうか」について、自分たちで決めておくのが任意後見という仕組みです。
具体的には、心あたりの人への依頼事項をしたため公正証書で契約します。頼む人と頼まれた人(将来の後見人)で、全国300弱の公証役場のいずれかに行くも良し、公証人に家や病院まで来てもらうのも良しです。公証費用は約4万円です。
自分で創る任意後見は、家裁が措置する法定後見に優先されるという原則があるので、任意後見契約をしておけば、見ず知らずの弁護士等が後見人になることはありません。頼んだ人が最期まで元気であれば任意後見契約は絵に描いた餅になりますが、それはそれで結構なことでしょう。
1.誰に頼むか?
誰でもいいです。親が子に頼んでも良し。夫が妻に頼んでも良し。兄が妹に頼んでも良し。自分の友人に頼んでも良し。個人ではなくNPO法人や後見会社に頼んでも良し。お金の事はAさんに、医療・介護のことはB法人に、というように内容を分けて頼むことも可能です。
2.何を頼むか?
頼める内容は大きく8分野です。それぞれ、①預貯金に関する事、②保険・証券に関する事、③不動産に関する事、④医療・介護に関する事、⑤相続・遺産分割に関すること、⑥税金や社会保険に関する事、⑦悪質商法対策や裁判に関する事、⑧その他(例:ペットの世話をしてくれるサービスの契約と費用の支払い、生活費の送金、その他)です。
任意後見では代わりにやってもらうことだけを頼めます。法定後見と違い取消権は発生しませんので、下手な買い物をしてしまった場合は取消してもらうのではなく、あなたに代わって相手方と交渉して処理してもらうことになります。
3.いくらで頼むか?
謝礼金みたいなものです。金額は無料から月10万円程度が多いです。月額のベース+実際に行った作業分という方法を取る場合もあります。金額や方法は法律で決まっていないので、頼む人と頼まれる人の間で決めることになります。
任意後見人に加え任意後見監督人に払う費用についても考慮しておくべきです。任意後見人が無料で、監督人が月5万円というケースも発生していますので。
監督人の費用は家裁が決めます。任意後見契約書の中に監督人の報酬は月1万円を超えないよう希望する等と書いておくのも良いでしょう。
4.実際に、仕事が始まる確率はどの程度か?
6%程度です。頼んだ人の6%が認知症になり、かつ、準備していた任意後見契約をスタートさせたということです。16人に一人程度といえます。
5.任意後見監督人って何?
頼まれた人(任意後見人)の仕事ぶりを見張る人です。頼んだ人は既に認知症ですから、任意後見人の仕事ぶりをチェックすることができない場合が多いです。よって、任意後見監督人をつける仕組みになっています。
任意後見監督人をつけるのは家裁です。ほとんどは家裁に営業している弁護士等が任意後見監督人になります。
6.任意後見監督人の費用は?
任意後見監督人の費用は、家裁が決めます。月3万円なら、年間36万円、5年で180万円程度になります。ただし、監督人が特定の手続きを踏まない場合、この費用を払う義務はありませんのでご注意ください。
7.監督人の同意を要する行為って何?
任意後見監督人の同意がないと、任意後見人といえども、その代理行為ができないという“しばり”です。このしばりが多いほど、決定権は任意後見人ではなく任意後見監督任人が持つことになるので、お勧めできません。契約書作成の時点で、頼む人および頼まれる人の意思で監督人の同意を要する行為を無しにすることもできます。
8.任意後見契約は解約できるの?
実際に始まる前であればいつでも、頼んだ方あるいは頼まれた方のどちらからでも、解約できます。解約も公証人にしてもらう必要があります。解約費用はおよそ5000円です。
まとめ
任意後見は、自分が認知症になったら「誰を後見人にするか」「何を、いくらでしてもらうか」について、自分で決めておく仕組みです。契約型の後見ともいえるでしょう。任意後見契約は公正証書で行うことになっています。どの公証人でも良いので気の合う人を選んで公証してもらってください。「監督人の同意を要する行為」という“しばり”を盛り込むか否かは、契約の当事者の自由です。後に、仕事が実際始まってからの運用の支障になることが少なくありませんのでよく考えてください。任意後見契約の最大のポイントは「監督人への費用を抑えることと監督人の同意を要する行為を減らすこと」と言えます。
最近のお悩みの傾向について
解説:一般社団法人「後見の杜」宮内康二代表
家族に弁護士等の後見人がついている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家族の反対を押し切って自治体が強引に後見人を付ける手続きをした
- 家裁やリーガルサポートに後見人の文句をいっても取り扱わない
- 後見制度そのものから離れる方法はないのか
ご自分が家族の後見人をされている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家庭裁判所から後見制度支援信託か監督人を選べといわれ当惑している
- 監督人から不当に文句を言われ、高額な報酬を請求されて困る
- 財産管理をする後見人がつき被後見人の通帳を出せとせがんでくる
後見人をつけるかご検討中の方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 後見人って大丈夫なの?
- 後見制度以外の方法はないの?
- 家族が後見人になるにはどうしたらいいの?
私たちは、後見される側やそのご家族の立場にたって、
一つ一つの後見事例の適切な運用をサポートします。
複雑な後見制度を紐解き、その運用を改善・向上していきましょう。