意識不明の夫にNPOの後見人がついています。意味がないと思うのですがなんとかなりませんか?
ある奥さまからのお悩み・ご相談
銀行から「後見制度を使うよう」いわれました。よくわからないので役所に行ったら、後見人になってくれるというNPO法人を紹介されました。そのNPO法人の言うように申し立てをしたところ、その法人が主人の後見人となりました。あれから5年、後見制度を使わなければよかったと後悔しています。
NPOの代表の弁護士は、「ご主人名義のお金だから」といって私に月5万円の生活費しかくれません。「あなたの貯金がなくなったら金額を増やしてもいい」とも言われました、屈辱的です。
夫は意識不明で、60年間連れ添った私が行っても、うんともすんとも言いません。にもかかわらず、NPO法人の担当者は、月1回、施設に行っています。何をしに行っているのでしょうか?意味がないと思います。
そんな感じで毎年40万円ほどの報酬が取られています。既に200万円、これから何年こんなことが続くのでしょうか?どうにかならないでしょうか?
NPO法人が後見人の場合
NPO法人が後見人(法人後見)の場合は、法人の理事の資格や肩書で雰囲気はだいぶ違います。理事に弁護士、司法書士、社会福祉士などが多い場合は、職業後見人と何ら変わりません。これに対し、いわゆる市民後見人が運営する法人後見もあります。いろんな職業経験のある人が有償ボランティア的に運営していますので雰囲気は良いところが多いです。障害者の親御さんらで運営しているNPO法人もあります。自分の子供たちだけを後見する場合と地域にまで視野を広げて後見する場合などがあります。それぞれの特徴を理解しながら、付き合い方や対策を考えるとよいでしょう。
1.理事に多職種の人が多い場合
NPO法人とはいえ、職業後見人と同じと思ってよいでしょう。弁護士、司法書士、社会福祉士、税理士、行政書士などが理事に就任しているはずです。自治体や地域包括支援センターに営業をしていることが多いので「専門家が多くて安心して任せられますよ」と言われ紹介されることもあるでしょう。結果的に、上記の奥さまからのご相談になってしまうことは残念なことです。
2.理事が同じような資格者で固まっている場合
行政書士さんだけで固めている場合が多いようです。司法書士さんと税理士さんのペアも少なくありません。その場合は、遺言、相続、不動産売却などを得意とするでしょうが、医療、介護、その他については苦手か興味がないことも多いようです。
3.市民による市民のための市民後見人によるNPO法人
市民による市民のための市民後見NPO法人というタイプもあります。子育てや介護を終えた主婦の方、銀行上がりの退職シニア、消費生活アドバイザー、その他、地域のために一肌脱ごうという方が集まり頑張っています。ただ、本当に活動しているのは理事長ほか数名で、それ以外はお手伝い的な法人も多いようです。後見の知識や技術は職業後見人に勝るとも劣らないといえるでしょうが、訴訟案件などが発生した場合は、弁護士さん等に依頼することになります。
4.障害者の親御さんらで運営している法人後見
障害者の親御さんらで運営している後見NPO法人もあります。多くの場合、家族会や福祉事業を行う社会福祉法人などを母体にしています。知り合いの障害者だけを後見する法人もあれば、知り合い以外の、もっと言えば高齢者の後見も引き受ける法人もあります。
5.ご相談のケースへの対応策
ご相談の奥さまが、今できることは、とりあえず、以下の3つでしょう。
①後見人に辞任してもらう(後見人の辞任)
②自分が後見人になる(後見人の追加)
③後見制度から離れる(後見開始の審判の取消)
(それぞれの手続きについては該当する記事でご確認ください)
いずれにせよ、NPO法人と話し合う必要があるでしょう。
職業後見人の場合は、辞めてくれそうにありませんが、「面倒になるのは嫌だ」という考えもあるので、感情的にならずに、思うところを話し合ってみてください。
市民後見や親御さん後見の場合は、「一生懸命やっています」というでしょう。しかし、奥様からすればそれが無駄に思えるわけですよね。よって「報酬だけでも、家裁のいう半分だけにしてください」などと交渉してみてもよいかもしれません。
NPO法人と話し合うときは、相手は数名出てくるでしょう。よって、友人や後見に詳しい人にも同席を求めるとよいでしょう。
なお、自治体の紹介で縁をもった経緯がある場合は、自治体に相談するのも有効です。また、NPO法人の管轄である都道府県にも相談するとよいでしょう。
まとめ
NPO法人が後見人の場合は、その理事の資格や肩書で、法人の雰囲気はだいぶ違います。それぞれの特徴を理解しながら、付き合い方や対策を考えるとよいでしょう。
NPO法人と話し合うときは、相手は数名出てくるでしょう。よって、友人や後見に詳しい人にも同席を求めるとよいでしょう。感情的にならずに、思うところを話し合ってみてください。自治体の紹介で縁をもった経緯がある場合は、自治体に相談するのも有効です。また、NPO法人の管轄である都道府県にも相談するとよいでしょう。
最近のお悩みの傾向について
解説:一般社団法人「後見の杜」宮内康二代表
家族に弁護士等の後見人がついている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家族の反対を押し切って自治体が強引に後見人を付ける手続きをした
- 家裁やリーガルサポートに後見人の文句をいっても取り扱わない
- 後見制度そのものから離れる方法はないのか
ご自分が家族の後見人をされている方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 家庭裁判所から後見制度支援信託か監督人を選べといわれ当惑している
- 監督人から不当に文句を言われ、高額な報酬を請求されて困る
- 財産管理をする後見人がつき被後見人の通帳を出せとせがんでくる
後見人をつけるかご検討中の方からのお悩みの内容で多いのが次の3つです。
- 後見人って大丈夫なの?
- 後見制度以外の方法はないの?
- 家族が後見人になるにはどうしたらいいの?
私たちは、後見される側やそのご家族の立場にたって、
一つ一つの後見事例の適切な運用をサポートします。
複雑な後見制度を紐解き、その運用を改善・向上していきましょう。