2017.12.21

自治体関係者向け「後見計画策定道しるべ」

一歩間違えると危ない後見利用促進計画

成年後見制度利用促進法の目的は、成年後見制度の利用を促進するための方策を自治体が企画・実行することです。しかし、利用者が家裁に申し立てることで始まる後見を自治体がどのように関与して促進できるのか、そもそも難しい性質を含む施策といえます。

それもあって「後見制度の利用者にとってメリットがあるように促進する」という前提が敷かれています。一歩間違えると、後見される側ではなく、後見する側のメリットに重きが置かれかねないからです。実際、後見の押売りで住民に訴えられた自治体もあります。

自治体の方は「自治体が後見の利用を促進する→住民による後見の利用が増える→被後見人となった住民の経済的自由が制限され後見人への支出が増える→後見人の収入が増える」という仕組みであることを忘れないようにしてください。それさえ忘れなければ、上記の訴訟のように自治体に降りかかるリスクは回避できるでしょう。

後見促進は努力義務です。しばらく様子を見るのもあり。補足ながら、後見促進法が司法書士会等の働きかけによる議員立法であった事実も踏まえておきましょう。

後見促進の“実務”ポイント

自治体の方から「後見促進をどうしたらよいか」という相談をよく頂きます。私からは「まずは後見ニーズ調査」と提案しています。住民に後見ニーズがなければ促進や供給によるメリットなどあるはずがないからです。

次に「後見ニーズ調査をどのように行おうか」という話になります。私からは「“成年後見コールセンター”を設置し、後見の啓発・相談・ニーズ調査を一緒に行うのがお勧め」と提案しています。住民が知りたいのは制度論ではありません。相談窓口がどこかでもありません。住民が求めているのは、自分や自分の家族の場合どうすればよいかという具体的な提案だからです。この住民ニーズに応えるには個別対応できるコールセンターが一番です。後見人にならないスタッフによるコールセンターにより、不正防止やトラブル対応も可能となります。病院、施設、銀行その他からの相談も受け付けられます。そのようなコールをまとめれば現実的なデータも集積でき、後見ニーズ調査も終わるというわけです。

予算がなく、ニーズが判然としない中での委員会、後見人養成講座、後見実施機関を優先する自治体の多くは、先細りになり、施策の見直しを迫れている現状でもあります。

1.後見ニーズ基礎調査&後見コールセンター初級編

まず、後見ニーズの量は既存のデータである程度代替できます。要介護認定の認知症自立度Ⅲ以上の人数+障害等級Aや1の人数、とすればよいからです。次に、後見ニーズの質の知るためには、(1)金銭管理、(2)銀行・保険・証券取引、(3)不動産関係、(4)相続・遺言、(5)医療・介護・福祉、(6)悪質商法等、(7)保証人・死後事務、(8)その他、の8分野×2~3問程度のアンケート項目を策定します。各項目に「必要性のある・なし」、「している・していない」、「できる・できない」の評価欄を設けチェックしてもらいましょう。

アンケートの対象は、自己評価として高齢者や障害者本人、他者評価として本人の家族・民生委員・介護福祉関係者、というように2方向とします。個人の項目ごとにこの2つの評価を照合することで後見ニーズの質や内容を浮き彫りにすることができるでしょう。

上記の内容を、アンケートではなく、コールセンター職員によるヒアリングの形式をとることで、よりニュアンスのあるデータを獲得することができます。相談してきた人(アンケートに回答する人)も愚痴の一つも言えて少しは気が晴れるかもしれません(笑)。

2.後見ニーズ応用調査&後見コールセンター中級編

財産管理で困っている住民と一緒に考えるイメージです。
ここでは不動産を例にします。

まず、対象となる物件が家なのか商業物件なのか畑なのか、その種類を把握します。次に、その権利が所有(全部・一部)なのか賃借なのかを把握します。そして、それを売りたいのか、買いたいのか、貸したいのか、保全したいのかなどの予定行為を相談者から伺います。加えて、その予定行為に対する本人ならびに相続人の意向を伺います。

そのうえで、現実問題として、例えば売る場合、買い手は後見人を立てないと買わないと言っているのか、後見なくても取引すると言っているのかを把握します。後見人を立てなくてもよいと買主が言うなら、後見は不要です。未確認の場合、相談者から買主に聞いてもらいましょう。後見が必要となれば後見ニーズが発生したことになりますが、他の買主ならどうなのか探してみましょう。後見無しでOKという買主がいればその売買は後見無しで成立するでしょう。どの買主も後見が必要ということなら後見の必要が生じたことになります。

ここで、そもそもその物件を今売らないといけないのか、あとでもいいのかを考えましょう。取引をしないなら後見は必要ないからです。

熟考の結果、今売るということになれば、任意後見→補助→保佐→後見の順で制度利用を考え、必要な事務支援を行います。後見を始めるためおよび後見が終わるまでの費用総額を最初に試算し本人たちに提示します。そこまでの費用をかけて後見を使って物件を売るかを考えて頂くためです(後見の費用対効果)。

総じて大事なのは、家庭裁判所の関与がないと本当にその行為ができないのかを見極める能力です。認知症や障害があっても、取引先や関係者の協力を得て何とか取引が成立することはよくあるからです。住民が求めているのは、後見の使い方ではなく、後見無しで何とかならないかを一緒に考え、実行してくれるサポートではないでしょうか?

3.後見トラブル調査&後見コールセンター上級編

後見人がついてからの相談対応です。後見人に対するサポートだったり、後見人と上手くいかない場合の改善策の提示、後見人の不正行為を家庭裁判所に通知する役割などを担います。少し専門的になるのでご興味ある方はお問い合わせください。

まとめ

後見する側ではなく、後見される側のメリットを意識した後見促進を検討実行してください。

具体的には、委員会・後見人養成講座・後見実施機関は後回しとし、まずは「後見ニーズ調査」を実行しましょう。住民に後見ニーズがなければ供給メリットなどあるがはずないからです。その際、“成年後見コールセンター”を設置し、後見の啓発・相談・ニーズ調査を一緒に行うことが有効かつ現実的です。住民は、自分や自分の家族の場合どうすればよいかという具体的な解決策を求めているからです。あるいは、結果ではなく、状況に共感してくれる人を探しているのかもしれません。

後見人にならない人が中立的に応対するコールセンターを敷くことで、不正防止やトラブル対応も可能となります。施設や金融機関からの問い合わせにも対応できます。そのような各種コールの件数や内容をまとめれば現実的なデータを集積でき、後見ニーズ調査が終わります。住民とのやり取りや実践的データを踏まえた上で委員会を開催してこそ、地域における有効な後見供給(人材育成&拠点形成)の検討、計画、予算化について意味のある議論ができるのではないでしょうか。

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